「砂糖と健康」研究会

Column4 /

砂糖と脳の関係、知っている?③
~腸と脳をつなぐ甘さの力~

砂糖の甘さは単なる味覚ではなく「腸と脳のコミュニケーション」にも深く関わっています。舌で感じる「甘さ」は神経回路を通じて脳に快感や満足感をもたらすことが知られていますが、最近の研究では、腸もホルモンや神経回路を介して脳と密接につながっており、砂糖が吸収されるときに分泌されるホルモンは、脳の満腹中枢を刺激することによって満腹感をもたらすことが明らかになっています[1,2]。このように、舌や腸から脳に「栄養を摂った」ことを伝えて食欲をコントロールすることが、過剰なエネルギー摂取を防ぐための生理的なメカニズムと考えられています[1]

近年、マウスによる動物実験により、砂糖類と人工甘味料がどのようなメカニズムで私たちの満腹感や食欲に影響を与えているのかを解明する研究が進んでいます[2,3,5,6]

ある実験ではマウスに砂糖を含む飲み物と、同程度の甘さの人工甘味料を含む飲み物を用意して、自由に飲めるようにしました。はじめマウスは両方から同様に飲みますが、48時間後には砂糖を含む飲み物からばかり飲むようになり、またこの現象は舌の甘味受容体に関する機能を喪失させたマウスにおいてもみられました[3]。このことは、砂糖を摂取した場合は舌からの伝達ではなく、腸からのシグナルが重要であることを示しています。具体的には、腸のニューロポッド細胞※1が活性化し、迷走神経※2を通じて信号を送ることで脳の報酬系が強く反応すると共に、砂糖への嗜好性が促されていることが確認されました[2,3,5,6]。一方、人工甘味料の場合はこの仕組みがうまく働かないことが分かりました[3,4,6]

実験から、砂糖は腸と脳をつなぐ食欲のコントロールに重要な役割を持つことが確認され、一方、人工甘味料は甘さを感じることはできても腸から脳に満足感を伝えられないため、他の食べ物を余計に食べてしまう可能性がありそうです[3,4,6]

  • ※1  ニューロポッド細胞:ギリシャ語の「neuro-(神経)」と「pod-(足)」を組み合わせた造語で、これは、神経のような突起(足)を持ち、腸内で神経と連絡を取る特徴から名付けられました。消化管ホルモンを分泌することで知られる腸内分泌細胞の一つです。
  • ※2   迷走神経:脳から体のいろいろな部分に信号を送る大事な神経です。たとえば、心臓をゆっくり働かせたり、呼吸を調整したり、食べ物が消化されるのを助けたりします。この神経は、私たちが意識せずに体の機能がうまく働くようにサポートしている、いわば「体の調整役」と言えます。
  • [1]  Ranier G., et al. The neuroscience of sugars in taste, gut-reward, feeding circuits, and obesity. Cell Mol Life Sci., 77,3469-3502(2020)
  • [2]  Diba B., et al. Gut-brain communication by distinct sensory neurons differently controls feeding and glucose metabolism. Cell metabolism, 33(7),1466-1482(2021)
  • [3]  Hwei-Ee Tan, et al. The gut-brain axis mediates sugar preference. Nature, 580,511-516 (2020)
  • [4]  Yu Qing L., et al. The Role of Sweet Taste in Satiation and Satiety. Nutrients, 6(9), 3431-3450(2014)
  • [5]  山田芹華、毛内拡 ショ糖嗜好性に関する腸脳神経伝達 日本神経回路学会誌, 30(3),112-120(2023)
  • [6]  Kelly L. B., et al. The preference for sugar over sweetener depends on a gut sensor cell. Nature Neuroscience, 25,191-200(2022)

本コラムは、精糖工業会「砂糖と健康」研究会が関連する論文や資料を調査し、その内容をもとに作成したものです。参考とした論文の概要は、以下のPDFよりご覧いただけます。

プロジェクト資料の閲覧にはAdobe Acrobat Reader等の
ソフトウェアをご利用ください。

pagetop